特定失踪者問題調査会の北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」
2005年10月31日放送開始!
毎晩
2330〜0000 5890kHz


 特定失踪者問題調査会(荒木和博代表)の北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」は、当初の発表から遅れること1時間、10月31日0時30分から開始した。そもそもの時差の換算ミスか、欧州のサマータイムの終了による手違いか、当初予定の23時30分〜0時ではなく、0時30分〜1時に放送された。
 調査会では送信を仲介しているVTコミュニケーションズと折衝した結果、
11月1日夜からは本来の23時30分〜0時に放送されることになった。
 しかし、実際には電波は23時14分から出たものの、「しおかぜ」の音声は乗らず、Radio Australiaの音声が流れ、23時41分から「しおかぜ」が始まった。
 尚、調査会はこれに先だち10月26日の記者会見で、短波放送についての詳細を発表した。以下は記者会見からの要約である。

  会見する荒木代表


 北朝鮮向け短波放送「しおかぜ」は、英国にある放送配信会社「VTコミュニケーションズ」に委託して実施するもので、調査会が制作した番組をインターネットを使って英国のVT社のサーバーにアップロードし、それを第三国の送信施設を通じて流す。VT社は世界の放送の10数パーセントの配信を取り扱っており、NHK国際放送も配信している。

 放送の目的は、(1)拉致被害者に対して日本で救出の努力をしていることを伝え、(2)北朝鮮当局に注意しつつ、情報を外部に出してもらうように伝え、(3)今後の課題として、北朝鮮の体制崩壊時などには避難場所等の情報を流すこと等にも使うことを想定している。被害者の持つ情報とは、例えば写真、髪の毛、音声の録音(「金正日万歳」など朝鮮語でも可)など、あらゆるものに期待している。髪の毛や録音でDNA鑑定や声紋鑑定ができる。また、避難場所等の情報を流すような事態になった時は、もちろん救援の体制が必要となるため、政府と連携をとりたい。「しおかぜ」という名称は、しおかぜに乗ってメッセージが伝わってもらいたいということに由来している。

 放送を始めるに至ったのは、7月に産経新聞でソウル発として、インターネット放送局の「自由北韓放送」が北朝鮮に向けて短波放送を行うとの記事が掲載され、これに関心を持った荒木代表が同月下旬に訪韓した際、同放送を訪問し、代表の金ソンミン氏から話を聞いた。そして、英国のVT社と連絡をとり、詰めを行ったのち、荒木代表がロンドンの同社に赴き、10月8日に契約を締結した。その時点で放送開始予定を10月30日とし、以後は技術的な問題を調整してきたが、26日未明、VT社側から技術的な問題がすべて解決したとのメールが届き、30日からの放送が確定した。

 放送は当初、1日30分で、日本時間2330〜0000に毎日放送し、資金や態勢等の余裕ができれば、今後、延長していく予定となっている。放送契約は最低1年間となっているが、基本的には問題解決までつづける予定。放送時間の延長に関しては、VT社側でいつでも対応可能となっている。周波数は5.89MHz、1波のみで北朝鮮全域を聴取可能地域(中国の北朝鮮国境付近及び韓国の北部でも聴取可能)としている。日本でも聞こえると思うが、やってみないとわからない。送信地についてはVT社との合意もあり、第三国ということしか公表できない。
 放送内容は、第1段階として公開されている特定失踪者250名と政府認定者及びその中間にある救う会認定者のデータ(氏名、生年月日、失踪年月日と場所、当時の年齢と現在の年齢)を読み上げる。1日に50人余りの名前を荒木代表が読み上げ、5日間で一巡する。読み上げは「○○さん、昭和○年○月○日生れ、昭和○年○月○日、○○県○○市で失踪。当時○歳、現在○歳。」のように行い、政府認定者の場合はデータの後に「○○さんは日本政府が認定する拉致被害者です」と入れることになっている。第2段階としては、希望する家族に書いてもらった拉致被害者への400字程度のメッセージを代読し、それが順調に進行した後には、第3段階として希望する家族からの直接の呼びかけを録音して流す。第1段階の番組は5日で一巡のため、3回ほど繰り返し流した後、その間の状況をみながら11月中旬には第2段階の番組を流すことも考えられる。それ以外の内容については、放送がスタートしてから検討していく。音楽を流したり、朝鮮語の放送を流してはどうかの声もあるが、今後の検討とする。
 北朝鮮には拉致被害者以外に、在日朝鮮人の帰国者や、その家族として帰国した日本人、戦前からの残留日系朝鮮人として日本語のわかる人がいるので、その人達の中で噂になって拡がることを期待している。

 放送に必要な費用は、毎日30分の放送で送信費用として年間約300万円かかり、一般からのカンパで賄う。家族会からも支援がある他、第3段階として失踪者家族からの直接の呼びかけを行う場合には、その希望者に費用負担をお願いする予定になっている。番組の制作は10月半ばから始めたが、制作にはスタッフの所持する機材(パソコン)を使用し、スタジオは使わずに調査会の事務所で録音を行っているために初期費用は殆どかかっていない。

 北朝鮮向け短波放送ということで、北朝鮮からの電波妨害(ジャミング)の懸念もあり、VT社側の話では複数の周波数を使うなどの方法があるが、基本的には電波妨害できる範囲はそれほど広くなく、北朝鮮国土を妨害でカバーすることは不可能とのことで、当面は1波で放送する。VT社でも周辺地域で受信状態は常時チェックすることになっている。もし妨害を受ける場合には、次の周波数変更時期である3月末に周波数を変更したり、複数の周波数の使用も検討するが、周波数が増えるとコストが余計にかかってしまう。

 尚、一般の放送のような対応はできないので、受信報告書は、郵便振替用紙を使った1000円以上のカンパで、通信欄に受信データ(日時、周波数、受信状態など)の記載されたものに限って、お礼のカードを送付する予定だが、まだベリカードは製作していない。
※1



実際の放送から:
※2

(ピアノ演奏の「故郷」をBGMに)
 こちらは「しおかぜ」です。
 東京から北朝鮮におられる拉致被害者の皆さん、さまざまな事情で北朝鮮に渡って戻れなくなった皆さんへ、放送を通じて呼びかけを行っています。
 この番組は日本の民間団体である特定失踪者問題調査会が多くの方々のご支援を受け、毎日午後11時半から30分間、短波放送5.89メガヘルツで放送しています。
 これから、拉致被害者及び拉致の可能性のある失踪者のうち、公開されている方のお名前を読み上げます。
 読み上げた方々以外にも非公開の失踪者で、北朝鮮に拉致されている方々が多数おられます。私達はすべての拉致被害者を救出するため力を尽くしています。拉致被害者の皆さんにはこれまで放置してきたことをお詫び申し上げます。必ず助け出します。それ以外の方々も、自由に日本に戻ることができるように努力しています。もう少しの間、頑張ってください。(以下略)



横田滋さん(横田めぐみさんの父)のコメント:
 特定失踪者問題調査会の努力によって、短波放送がスタートするということですが、私も短波放送がどのくらい聞く可能性があるかについては、以前は(ダイヤルが)ハンダ付けしてあって聞けないとか聞いていたが、このあいだ、ジェンキンスさんが本の中で(VOAを)聞けるとありましたから、可能性は昔みたいにゼロではないと思います。ですから、多くの方が聞いて、日本に連絡することは難しいかもしれないが、何かの機会を捉えて、こちらの方に情報が流れてきたらと思います。

竹下珠路さん(古川了子さんの姉)のコメント: 
 初めに9月か8月末に調査会から手紙をもらって、こんな方法があるのかと思って本当に驚いたのと、大変期待しております。そして、どんな形でうちの妹や多くの被害者の皆さんが聞けるのか、聞けないのかわかりませんけれど、自分の名前を日本からの放送で探しているということを何とか届いて欲しいと思います。
 本当に一人でも二人でも本人達につながるように、そして、自分達を捜してくれているのだから自分達も頑張ろうと思ってくれるように期待しておりますし、願っております。


※1 特定失踪者問題調査会では、短波放送のためのカンパを受け付けている
郵便振替口座: 00160-9-583587 特定失踪者問題調査会
通信欄には「短波放送のためのカンパ」と明記のこと

※2 「しおかぜ」の放送サンプルが、戦略情報研究所のホームページで公開されている。このページで紹介したオープニングと、古川了子さん、横田めぐみさんのデータ部分が公開されている。 http://www.senryaku-jouhou.jp

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