FM・TV異常伝播とは


 FM・TV放送の伝播は、一言で「見通しのきく直線伝播」などと言われます。もちろん、電波は山頂やタワーなどの高地から送信されたりしますので、実際には見通せなくても電波はある程度到来しますが、送信所から離れたところでは、屋内やビルの陰などに入ると受信状態が低下するのは実感としてわかると思います。また、送信所から遠く離れていても、途中にある山などが鏡のような役割で電波を反射させ、思いもよらぬ遠距離まで電波が届くことがあります。
 ここでいう異常伝播とは、そのような常時受信できるFM・TV放送以外に、遠く離れたFM・TV放送がごく稀に受信できる現象のことを言います。例えば、日本において、韓国、北朝鮮、中国、台湾、ロシアなど、近隣の外国のFM・TV放送が受信できるのです。また、日本国内でも、東京や大阪などで沖縄のFM放送が受信できたりすることがあります。

 異常伝播の様々な現象のうち、よく知られているのがEスポとトロッポです。
 Eスポとは、スポラディックE層による伝播のことです。地上から約100キロメートルのところに発生するこの電離層は、FM・TV放送が使用しているVHFの伝播を反射するため、1000から2000キロメートル遠く離れたところの電波を届けてくれます。但し、このEスポがどうして発生するかは解明できておらず、異常伝播による受信を試みるマニア達も、”なんとなくEスポ日和”的な経験で受信機に向かっています。毎年4月下旬のゴールデンウィーク前から9月上旬頃まで、午前中や夕方から夜にかけて、Eスポの恩恵にあずかれる日々があります。この時期になるとNHKテレビなどで「気象の状況により一部地域で画像に乱れが出ております」などの字幕が出ることがありますが、このときにはEスポが発生して、NHKのTV電波が外国の電波に影響を受けているのです。Eスポと気象は関係があるという裏付けはありませんが、長年の感覚と、NHKの字幕がEスポ発生を知らせてくれます。
 Eスポは長時間発生するとは限らず、また雲のように移動します。ある瞬間、中国東北部のFMが聞こえていたと思うと、次第に北朝鮮が聞こえ始め、最後には韓国のFMが沢山聞こえたかと思うと、何も聞こえなくなったというような感じになります。ちょうど、天気予報で見る雲の流れのように、聞こえる地域がさっと移動したり、あるいは停滞したりします。

 トロッポは対流圏伝播で、日本では九州北部と山陰から北陸にかけての日本海沿いの地域で韓国のFM・TV局が受信できるのが一般的です。Eスポと違って長時間かつ安定的に受信できることも多く、その発生も頻繁であったりします。VHFだけでなくUHFまでも反射するため、韓国のTVを受像するマニアも沢山います。

 このような外国のFM・TVを受信するためには、その放送の周波数帯をカバーしている受信機が必要になります。日本のFMバンドは76〜90MHzですが、世界の殆どの国では88〜108MHzがFMバンドになっていますので、日本ではワイドバンド仕様になっているFMラジオが必要になります。もし手許にワイドバンド仕様がなくとも、88〜90MHzは日本と重なっていますから、いくつかの入門局を狙うことができます。あるいは、日本のFMバンドの中に、外国のTVチャンネルがあったりします。但し、近年、近隣諸国のFM放送局数が急増しているため、いずれの場合にも、周波数が直読できるデジタル表示でないと、局名の確認は困難を伴うでしょう。
 入門局としては、

などがありますが、実際に聞こえ出すと、同じ方面の放送局の様々周波数が同時に聞こえたりします。日本や海外の具体的なFM放送周波数については、当会発行の「近隣諸国FM放送便覧」を参考にしてください。これには送信地などのデータも記載されているため、いわゆる「芋づる式」受信に有用です。つまり、今受信できている局と、送信地が同じ放送局がいくつかあれば、無差別にダイヤルを回すのではなく、それらを順に重点的にチェックする方法です。例えば、上記の入門局の中では沖縄の3局は大抵同時に入感しますし、韓国の2局も同じ送信塔から送信されていますので、同時に入感します。
 慣れないうちはあまりの多くの放送局の入感に気が動転して、まったく局名が確認できないまま終わってしまうことがあります。インターネットによる情報交換によって、少しでも早くEスポやトロッポによるFM・TV放送の受信を共有できればと考え、当ホームページに「FM・TV異常伝播受信レポート」という情報掲示板を設けています。異常伝播に気付かれた方は、是非とも掲示板にご一報いただきたいと思います。また、局名アナウンスらしきものが聞こえたにもかかわらず、語学力の関係で局名を確認できなかったという方や、「近隣諸国FM放送便覧」にも掲載されていない新局の報告などのために、音声ファイルの送付ができる「不明局調査依頼フォーム」を用意いたしましたので、どうぞご利用ください。



2000.4.3更新

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