1月8日、韓国、軍事境界線での対北拡声器放送を再開
韓国は2016年1月8日12時、北朝鮮に向けた拡声器放送を約4ヶ月ぶりに再開した。
拡声器放送は「自由の声放送」といい、昨年8月に中断して以降も、FMと短波で放送を継続していた。
今回、北朝鮮が1月6日に実施した核実験を受けての拡声器放送再開だが、急な決定だったようで、拡声器放送は8日12時からの再開だったが、拡声器放送再開を受けての特別番組は同日20時から編成されている。
拡声器による放送の再開にあたり編成された番組は、昨年8月と同じ「民族の名で告発する」「北韓は挑発策動を中止せよ」「北韓当局に求む」の3番組。
今回の再開は約4ヶ月ぶりで、2015年8月に北朝鮮による軍事境界線における地雷爆発事件を受け、8月10日17時より11年ぶりに拡声器放送を再開し、その後、南北の緊張状態へと発展したが、8月22日から24日まで板門店で行われた南北高位当局者接触の合意事項により、25日正午をもって拡声器放送は中断されていた。
以下は2015年8月23日に開催されたアジア放送研究会主催「第37回近隣諸国放送研究フォーラム」における山下透会長の講演「朝鮮半島の電波戦最新事情」から、2015年8月10日から25日まで行われた「自由の声放送」の拡声器放送に関する部分の抜粋である。
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韓国軍は8月10日、非武装地帯の韓国側において朝鮮人民軍が埋めた地雷が4日に爆発し、韓国軍の兵士2名が重傷を負ったと発表した。そして、その挑発に対して「厳しい代価を支払わせる」と述べた。これを受けて同日17時から、対北拡声器放送を再開させた。
韓国軍による拡声器放送「自由の声放送」は1962年に始まり、1972年の7・4南北共同声明の誹謗放送中止の合意によって一旦中断したが、1980年12月には再開を確認している。そして2004年6月の第2回将官級軍事会談において6月15日から軍事境界線地域における拡声機などのすべての宣伝活動を中止することに合意したことにより6月14日24時をもって再び放送が中断された。これによって自由の声放送を流していた大型拡声器は撤去されたが、放送設備や人材を維持するために、国軍教育放送として韓国軍の兵士に向けたFM放送を実施した。しかし、2010年3月26日に発生した韓国海軍哨戒艦「天安艦」の撃沈事件を受け、同年5月24日18時からFMによる自由の声放送が復活した。そして、2014年5月1日から短波放送も追加した。
韓国軍は2010年の「天安艦」撃沈事件の際に拡声器放送を再開すべく一部の拡声器を元に戻して再開の準備をしたが再開には至らず、今回、急遽再開したものである。
拡声器放送再開前は、放送時間は1700~0500、0600~0900、1200~1400だったが、再開後は番組編成と共に大幅に変更しているようである。調査は完了していないが、1800~2300、0100~0600、1200~1700の放送が確認できている。そして、各放送開始、終了前後のアナウンスはなくなり、2200、0200、1300から5分間、拡声器放送の開始アナウンスが流れるようになっている。
「人民軍と北韓同胞の皆さん、こんにちは。こちらは大韓民国からお送りする自由の声放送です。自由の声放送は北韓政権と労働党の下で苦痛を受け、利用されている人民軍と北韓同胞の皆さんに真実を伝える放送として、去る2004年6月、南北将官級会談で拡声器放送中断に合意し、同年6月15日24時付けで放送を中断しました。(中略) では只今から拡声器放送を始めます。」
そして北朝鮮側も17日から対南拡声器放送を再開したが、これは実質的に軍事境界線において自由の声放送を聞こえなくするための妨害措置に過ぎないようである。
自由の声放送の拡声器放送は、昼間は約10km、夜間は約24km先まで届いているとされているが、「忘れられない三日浦のこだま」という歌で知られる北朝鮮の三日浦を訪れた際、10km先の韓国側から自由の声放送が聞こえてこだましているのを確認しているので、相当な効果があるようである。
そのため、北朝鮮は20日、人民軍総参謀部名義の通知文を国防部宛てに送り「20日午後5時から48時間以内に対北朝鮮心理放送を中止して、全ての手段を全面撤去すること。これを履行しない場合、軍事的行動を開始する」と通告した。韓国軍はこれに応じない方針と伝えられており、南北の緊張が高まっている。
自由の声放送
自由の声放送は国防部心理戦団による放送で、1962年に軍事分界線における拡声器放送として始まった。1972年の7・4南北共同声明の誹謗放送中止の合意によって一旦中断したが、1980年12月には再開していることが確認できた。
2004年6月3日から4日にかけ、韓国の雪嶽山で開かれた第2回将官級軍事会談において6月15日から軍事境界線地域における拡声機、電光板、気球によるビラ散布などのすべての宣伝活動を中止することに合意したことにより6月14日をもって再び放送が中断された。
これによって自由の声放送を流していた大型拡声器は撤去されたが、放送設備や人材を維持するために、国軍教育放送として韓国軍の兵士に向けたFM放送を実施した。
しかし、2010年3月26日に発生した韓国海軍哨戒艦「天安艦」の撃沈事件を受け、同年5月24日18時からFMによる自由の声放送が復活した。その後、国防部は中波による放送も模索していたようだが、2014年5月1日から短波による放送も追加した。
放送は大韓民国ソウルから放送しているとアナウンスしており、短波6135kHz(華城)と、FM101.7MHz(白翎島)、103.1MHz(江華島および大岩山)、107.3MHz(華岳山)で放送されている。
そして、北朝鮮による軍事境界線における地雷爆発事件を受け、2015年8月10日17時より拡声器による放送を再開した。この拡声器は、2010年の「天安艦」撃沈事件を受けて、いつでも拡声器放送を再開できるように準備していたという。しかし、8月22日から24日まで板門店で行われた南北高位当局者接触の合意事項により、8月25日正午をもって拡声器放送は中断された。
さらに、北朝鮮が2016年1月6日に実施した核実験を受け、8日12時から拡声器放送が再開された。
拡声器放送再開時の番組の一部(2015年8月)
21:00 韓民族統一へ未来へ
21:40 新しい生活を探した人達
22:00 拡声器放送開始アナウンス
22:05 報道広場
22:20 今日の焦点
22:25 民族の名で告発する
22:40 北韓は挑発策動を中止せよ
22:50 北韓当局に求む
23:00 放送休止
1:00 報道広場
1:15 今日の焦点
1:20 新しい生活を探した人達
1:40 心の灯火
1:50 希望ちゃんの家
2:00 拡声器放送開始アナウンス
2:05 報道広場
2:20 今日の焦点
2:25 民族の名で告発する
2:40 北韓は挑発策動を中止せよ
2:50 北韓当局に求む
3:00 韓民族統一へ未来へ
3:40 金サッカッ八道遊覧記
3:45 今日の焦点
3:50 労働新聞再読
4:00 幸福な大韓民国
4:40 新しい生活を探した人達
5:00 今夜をミンジとともに
6:00 放送休止
赤字は拡声器放送再開に伴う新番組
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お問い合わせは、へ。
2004年6月20日放送「報道特集 38度線突破北朝鮮兵士激白!決死の脱出劇 」(TBS系)に当会が協力しました。
2015年8月24日放送「NEWS23」(TBS系)に当会が協力しました。
2016年1月8日放送「ひるおび!」(TBS系)に当会が協力しました。
2016.1.10更新